完成までのストーリー

「住む」をもっと気軽に。
「暮らす」をもっと身軽に。

2023.09

時代の変遷とともに変わる、暮らしへの価値観。所有から利用へ、社会的なステータスよりも自分の暮らしを豊かにすることへ意識が向き始めていることに着目して、私たちは小規模の新築賃貸住宅「デュオメゾン池袋」を作りました。
「持たない暮らしと地域防災」をテーマに作ったこの物件は、コストを抑えつつ、家電や家具など数種類のサブスクサービスを使って、持たない暮らしを実現することを目指しています。また、防災備品も住民や周辺地域とシェアすることで、地域の防災拠点となればと計画をしました。
持たない暮らしと地域防災という、今の時代だから出来たチャレンジを詰め込んだ「デュオメゾン池袋」のプロジェクトストーリーをご紹介します。

池袋で暮らす

今回の物件は、池袋駅から徒歩10分のところにあります。
池袋といえば、住みたい街ランキング※で上位にランクインする、若者に人気の街です。駅周辺にはサンシャインをはじめとする高層ビルが立ち並び、その一角にはアジア系の飲食店があったり映画館や演芸場があったりと、様々な文化が重なり合い、街の賑やかさを作り出しています。
そんな都会の喧騒を抜けて、同じ池袋とは思えない閑静な住宅街に、今回の物件はあります。遠目に見える街の賑やかな景色と、落ち着きのある住宅街というギャップに「この物件は、よいものになる」、そんな予感がしたものです。
しかし池袋というブランドから、周辺に競合物件も多く、分譲マンションの賃貸と同じぐらいの家賃設定になるというネックがありました。「何か強い価値を作りたい」、担当者が集まっての終わらない打ち合わせが始まりました。

Ryuji / PIXTA(ピクスタ)
※株式会社リクルート「SUUMO住みたい街ランキング首都圏版」

持たない暮らし

今回の物件の企画チームには、社内でも比較的若いメンバーが集められました。池袋という立地と、1戸あたりの居室の面積からターゲットになるのは20代半ばのDINKSや一人暮らしだと想定されます。まずは、自分たちの友人知人の生活を徹底的に見聞きすることからリサーチを始めました。
ある日の会議でのことです。担当者から、「居室が小さくなってきているから、なるべく持ち物を少なくして、シェアしながら自分の暮らしを作り上げていくことが、暮らしの楽しさに変わってきているよね」という話題が出てきました。
音楽や映画、本、自転車、洋服といった生活に必要なものがサブスクに変わり、気づけば私たちはそれを当たり前のように使っています。生活の基盤をシェアで構築できたら、若者の価値観の変化への対応にとどまらず、新社会人がまとまった費用をかけずに新生活を開始できたり、単身赴任や進学など決まった期間の転居の際に大型家具を購入することに対して躊躇するといったことにもニーズがあるのではないか…。
こうして私たちの中で「持たない暮らし」というコンセプトは出来上がっていきました。生活コストが上がってしまっては意味がないので、コストにも考慮して家具家電、本、食器のサブスク、シェアサイクルをご案内することにしました。
現在、入居開始から5ヶ月で、13世帯が入居しており、今後は洋服、食事、車といった生活必需品のサブスクやシェアサービスを拡充予定です。

サブスク家具を中心にレイアウトしたモデルルーム
シェアサイクルLUUP

地域防災

生活用品のシェアと一緒に、今回私たちが取り組んだのが地域防災でした。これは、この場所で建設すると決まったタイミングから気になっていたテーマです。
池袋駅周辺は避難場所がなく、防災マップを見ても、池袋駅西口エリアはぽっかりと穴が空いていました。町内会で話を聞いてみると、3.11の東北地方太平洋沖地震の際には、数少ない避難所に人が溢れかえり、受け入れることができなかったそうです。
「単身やDINKSといった人こそ地縁がない分、災害時への備えやつながりを作りたい。持たないことをコンセプトにしているので、共用部で備蓄品を共有できたら。小さな範囲にはなるけれど、それが地域の人にも提供できたらいいのでは」と、どんどん構想は広がり、具体になっていきました。

私たちにとって、賃貸住宅の共用部を防災拠点として地域の人に開放するのは初めてのことだったので、町内会や行政とも話し合い、拠点の整備を進めていきました。
こうして、エントランスホールの壁面にはAED設置場所や避難場所を描いた近隣狭域の地図を設置。また災害時に入居者や近隣にお住まいの方が利用しやすいアプローチ部分に、防災備蓄倉庫を設け、スマホ用バッテリーやマンホールトイレ、ソーラーパネル式の湯沸かし器を準備しました。マンホールトイレやスマホ用バッテリーの格納場所がわかるよう、壁面や床にはサインも設置しています。

エントランスホール壁面に設置した近隣狭域の地図
防災備蓄倉庫

みんなで作り上げる

今回、私たちが一番苦心したのは、「デベロッパーがサービスを入れて、それでおしまい!」とならないことでした。そのためには、マンションを日々管理する管理会社、入居の手続きをする仲介会社、そして地域の人たちを巻き込む必要があったのです。とにかく関係者が多いプロジェクトですから、そこに至るまでは苦労の連続でした。
管理会社には、企画の段階からチームに加わってもらい、入居後の利用イメージをすり合わせ。「入居したけど、サービスの使い方がわからないから使わない」、「トラブルが起きた」とならないようサービスを仕上げていきました。また仲介会社へも、今回のコンセプトやサービス内容を丁寧に共有し、ご理解をいただきました。このために私たちが作ったマニュアルは、今見ても「よく作ったなぁ」と感心してしまうぐらい内容が濃く、皆さんには感謝しかありません。
こうして、関係者の皆様の深い理解と協力のもと、物件は完成を迎えました。

日々の便利さ

こうして入居募集を開始したデュオメゾン池袋。ありがたいことに集客は順調です。
物件が皆さんから好評なのは、サブスクサービスと防災もありますが、全住戸にスマートロックや家具家電のリモコンを一元化できるIOTサービス「スマートホーム」を取り入れたことと、間取りにもあります。
今回、全ての住戸にウォークインクローゼットをつけていますが、ウォークインクローゼットの大きさを従来よりも広くして、その中に作り付けのデスクを置き、書斎としても利用してもらえるようにしています。これはリモートワークが進んでいることはもちろんですが、初めての二人暮らしの方が多いことを想定して、1人の時間を大切にできる場所を確保したいという担当者の思いがあります。実際にお住まいの方からは「収納というより、これは部屋ですね」とコメントをいただき好評です。

ウォークインクローゼット内のデスク

地域にマンションを開放する

入居募集の開始と同時に防災の取り組みも前進しています。
今回のデュオメゾン池袋は、近隣にお住まいの方が利用できる設備を設けているものの、行政の認定施設ではないため、その周知は必須でした。また、入居者の立場にたっても、有事の際に初めて地域の方にお会いしたり、設備を使うのはハードルが高い。そこで、入居者、近隣にお住まいの方や町内会の方を対象に施設見学と備品の説明会を実施しました。
説明会には入居者と地域の方を合わせて16人の方が参加してくださり、マンホールトイレの使い方を学んだり、蓄電池からお湯を沸かす体験をしていただきました。参加者からは「お水や簡易食料の備蓄は家庭でもしているものの、トイレや電気があるのは心強い」、「一度体験しておくと安心感につながる」というコメントもいただきました。これをきっかけに近隣の方と顔見知りの関係を作り、いざとなったら助け合い、防災備品が使えることを目指していきます。

防災備品の説明会では 実際にマンホールトイレを設置して説明
有事の際には街のちいさな防災拠点として機能する

たくさんの初めてを詰め込んだデュオメゾン池袋。住宅は毎日のことですからトラブルがあってはいけません。そのためにサブスクサービスにしても、防災にしても、メンバー一丸となってここでの暮らしをシミュレーションした時間は忘れることができません。
入居が始まり、少しずつではありますが、ここでの暮らしぶりを聞く機会が出てきました。「いつも使っているアイフォンを最新機種にした時のように、劇的に変わるわけではないけれど、自分にとって満足で便利。暮らしのアップデートとでも言うのかな」とお住まいになった感想を言っていただけたことは、非常に印象的でした。
もっと便利に、もっとご利用いただけるように、サブスクサービスの拡充など、デュオメゾン池袋での挑戦はもう少し続きそうです。

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