未知のマーケットを自分たちで切り拓いていく。
それこそがフージャースのスタイルだ。
野口
「デュオヴェール」のプロジェクトが立ち上がったのは、飯田橋の物件が始まりだから2015年の秋くらいかな?
井上
そうですね。ほぼ同じ時期に飯田橋、初台、浅草とコンパクトマンションを3物件開発することになって、ならば統一した戦略を考えようとなったことがきっかけです。野口さんが主に営業戦略を、私がコンセプトづくりや広告戦略を担当し、途中から野口さんをサポートする形で田久保さんが加わった感じですね。
野口
最初にマーケット的な話をすると、首都圏でのコンパクトマンションというのは以前から需要があってすでにマーケットも確立されているわけだ。
田久保
でも、その大半はいわゆる投資用マンション。投資目線でつくられているから、住む人にとって快適な住まいとはいえませんでした。(笑)
野口
一方で、東京都では単身世帯、つまり一人暮らしの人たちが急増していて2035年には全世帯の半分を占めるとも予測されている。
井上
つまり、金銭的に余裕があってそれにふさわしい一人暮らしがしたいというニーズがあるにもかかわらず、それに応えるマンションが不足しているという現状があるわけです。
野口
需要はあるが供給がない。そんな独自の領域にチャレンジしていこうというのがフージャースのスピリット。ならば、自分たちでマーケットを切り拓いてやろうというのが今回のプロジェクトの発端でした。
田久保
さらに私たちがターゲットとして絞り込んだのは、都心ではたらく単身女性の方々です。
野口
大規模ファミリーマンションで培ったノウハウや女性目線のものづくりといったフージャースの強みを生かせば、絶対に忙しくはたらく女性のニーズに応える“売れる”マンションが供給できるという感触があったね。
井上
でも、本格的にプロジェクトが動き出したのは2016年の春。そこからわずか半年あまりで、新しいブランドを立ち上げ、3つの物件の開発を進め、総合モデルルームまでつくったのは、スピード感あふれるプロジェクトでしたね。
銀座の表通りに総合ギャラリーをオープンする。
大胆なビジネススタイルは周到な戦略に支えられている。
田久保
「デュオヴェール」のコンセプトづくりでは3人を含めたコンパクトブランドチームでそうとう議論しましたね。それを仕切ったのは井上さんでした。
井上
みんなで議論した結果、顧客像として立てた仮説が「単身女性、キャリアウーマン」。そこから顧客像を肉付けしていくために、女性雑誌を30冊くらい読み込みました。専門のコンサルタントの先生にもアドバイスをいただいて。
野口
ブランドのコンセプトによって土地の仕入れからマンションのデザイン、間取りや収納、設備仕様、管理体制まですべて決まるのだからこのステップが一番重要でした。
田久保
それから今回のプロジェクトでは、もうひとつ先駆的な仕掛けがありますね。ブランドとしての総合ギャラリーとなる「デュオヴェール銀座レジデンスギャラリー」を開設したことです。
野口
大規模なファミリーマンションと比べるとコンパクトマンションはどうしても1物件あたりの収益性は低くなる。そこで物件ごとにモデルルームをつくるのではなく、ブランド共通となる総合モデルルームを開設することによって効率化を図ろうという発想でした。総合モデルルームではこれまで他社でもいくつか例がありますがコンパクトマンションとしては初めてのチャレンジだね。この総合ギャラリーでは立地や企画など井上さんがこだわり続けたね。(笑)
井上
そうですね。(笑)ターゲットとするはたらく女性の方々が仕事帰りに気軽に立ち寄れるギャラリーにしたかったのです。丸の内、有楽町、新宿…。場所もいろいろ悩みました。最終的には一番ふさわしい街と考えて銀座を選びました。
野口
銀座二丁目、銀座中央通り沿いのビルという一等地。今考えると、会社もよく私たちの大胆な提案を認めてくれたよね。それだけフージャースがチャレンジングな会社だということなのだろうけれど。
順風満帆で加速し始めたプロジェクト。
だが、総合ギャラリーにはまだ課題があると思う。
井上
「デュオヴェール」の最初の物件となる飯田橋と初台の販売スタートが2016年9月で、モデルルームのオープンがその直前の8月末。まさに目の回るような忙しさでしたね。
野口
あの頃には営業戦略の立案も田久保さんに主役になってもらった。部屋の価格決めではそうとう悩んだみたいだね。
田久保
コンパクトマンションといってもすべての部屋が1LDKのような仕様にできるわけではなく、スペース取りの関係で3LDKなどの部屋を織り交ぜる必要があります。それらの部屋を含め全体の収益性を考えて最適な価格決めをしなければならないわけです。
野口
確か初台の物件は坪単価だけ見ると、フージャースでも史上最高額クラスでしょう。田久保さんは価格決めを本格的に任されるのは初めてで、まして「デュオヴェール」のようなコンパクトマンションはフージャースにとって初めて。チャレンジ尽くしのプロジェクトだったね。(笑)
田久保
ええ、社内に誰も経験者がいないわけですから。たいへんだったし怖かったです。でも、それ以上にこの経験は貴重で、今までのフージャース生活の中で最も記憶に残る仕事となりました。
井上
そんな苦労もあって飯田橋も初台も比較的順調で、続いて2016年4月に販売された浅草はそれらの集大成ともいえる仕上がりで非常に好評でした。一方、総合ギャラリーの方はまだまだ試行錯誤の最中という感じですね。
田久保
そうですね。それぞれの物件とはまったく縁のない銀座にあるサテライトモデルルームにいかに足を運んでいただくか?あるいは銀座に来ていただいた顧客をいかに現地の物件にご誘導するか? そのあたりの仕掛けや営業の体制づくりなどまだまだ取り組むべきことがたくさんあります。でも、「デュオヴェール」のブランドを気に入っていただいて、目当てだった物件とは違う「デュオヴェール」の物件をご契約いただく顧客がいたりして、統合ブランドとしてのメリットも発揮されつつあるように感じています。
井上
そのあたりが私たちが目指すひとつのゴールかもしれないですね。「デュオヴェール」というブランドが認知され、はたらく女性のためのマンションというイメージが定着すれば、ビジネスの展開も大きく変わってくるはずです。
誰も挑んだことのない新しいマーケットを創出していく。
それは社会ニーズに応え、貢献する仕事でもある。
井上
フージャースでは、「デュオヴェール」をマンション事業の次なる柱に考えていて、将来的には年間100億円の売上を見込んでいます。それだけにプレッシャーもありますが、これほどのプロジェクトをゼロから立ち上げられたことは私自身大きな経験になると感じています。ところで、今後の戦略としてはエリア展開がありますね。
野口
そうだね。すでに札幌と福岡で「デュオヴェール」の立ち上げを進めている。「デュオヴェール」というブランドに時代が追いついてくれば、首都圏ばかりでなく地方都市でも必ずビジネスチャンスがあると思う。
田久保
井上さんが言ったように「デュオヴェール」が今後大きな事業に成長すれば、社内のさまざまな部門でメリットが生まれますよね。検討できる土地の幅が広がって、それだけ若手が活躍できるチャンスが増えます。
野口
「デュオヴェール」そのものも入社したての若手社員にとっても販売しやすいブランドだし、顧客層にあわせて女性だけの営業チームを立ち上げるという戦略なども考えられるよね。
田久保
「デュオヴェール」は、「都心でいきいきと、自分らしく働く女性」をメインターゲットに掲げていますが、実はフージャースも、このような女性がたくさん活躍している会社です。私自身、ビジネス抜きに考えても「デュオヴェール」にはもの凄く共感するものがあります。実際販売に携わって顧客の生の声を聞く度に、チャレンジしてよかった、もっとチャレンジしようという純粋な気持ちが湧いてきます。
野口
誰もチャレンジしていない新しいマーケットを開拓していこうというフージャースのスタイルは、独自のビジネスチャンスを掴むばかりでなく、まだ満たされていない社会的なニーズに応え、社会に貢献するビジネスでもあると思う。この「デュオヴェール」も、まさにそんな事業だと思うね。