完成までのストーリー

「好き」と暮らす、デザインレジデンス。

2025.6

この土地で、私たちはどんな挑戦ができるだろうか――。

「デュオヒルズ藤が丘」は、名古屋市営地下鉄東山線・藤が丘駅から徒歩12分。人気の長久手市に位置するものの、駅からはやや距離があります。土地の形状と周辺に建ち並ぶ戸建て住宅との兼ね合いで、敷地へのアクセスが狭く、決して好条件の土地とは言えませんでした。だからこそ「この物件だから欲しい」と思っていただけるような挑戦をしなければ……。他にはないモダンな外観デザインや、植栽豊かな外構はこうして実現しました。
こう書くと簡単に聞こえるかもしれませんが、その挑戦の影には建築担当者と、実際に建物をつくる施工会社との緻密で丁寧なコミュニケーションがありました。
今回は、デュオヒルズ藤が丘(以下、DH藤が丘)のプロジェクトストーリーをご紹介します。

難条件の土地と、挑戦のはじまり

「SUUMO住み続けたい自治体ランキング 2024愛知県版」で第1位にランクインし、名古屋市内のベッドタウンとしてファミリー層に人気がある愛知県長久手市。通勤の利便性、買い物や子育て環境、自然の豊かさなど、暮らしやすさが整ったエリアです。
しかし、今回の物件は「藤が丘駅」から徒歩12分と、駅から少し距離がある立地。さらに、前面道路は幅4メートル未満で工事車両や消防車進入ルートを確保するのも困難、と土地の条件は非常に厳しいものでした。開発を検討していた他社の中には、その条件の厳しさから諦める会社もあったほどです。
この土地の購入を検討する際、社内からも「施工・ものづくりが難しい土地」という声が上がりました。それでも「わが社の建築チームなら、必ず良いものをつくってくれる」と開発に向けて行政との交渉を取りまとめた企画チームの努力を思うと、頑張らずにはいられませんでした。「これは大変な宿題をもらってしまった」と思いながらも、知恵を絞り、最良の答えを探す日々が始まりました。

藤が丘駅前
藤が丘駅前
現地から徒歩4分の遊歩道
現地から徒歩4分の遊歩道

アプローチの工夫で、街との心地よい距離感をつくる

最初に考えたのは、マンションの“顔”ともいえるアプローチ部分の設計です。接道している前面道路は幅4メートル未満。道路側からマンションを見たとき、建物による圧迫感が出てしまうのではないかと気になりました。そこで私たちは、1階共用部の1スパン分を車寄せとし、建物の長さを調整することで、アプローチに奥行きを持たせることにしたのです。ただし、1スパン分を車寄せにすることで居住面積が減ってしまってはいけません。そこで、当初は6階建ての計画だったところを、7階建てに変更することが同時に決めました。
また前面道路との接道部分にはできる限り植栽や照明を設け、街にいろどりを与える演出しました。従前は工場が建ち、夕暮れ以降は薄暗かった場所も、DH藤が丘ができたことで昼夜問わず明るい雰囲気になりました。
今年の春には外構の桜が見事に咲いたので、ふと足を止めて桜を見上げる方もいたそうです。

前面道路との接道部分に配置した豊かな植栽
前面道路との接道部分に配置した豊かな植栽
奥行きのあるアプローチ
奥行きのあるアプローチ

いい意味で、マンションらしくないデザインを

DH藤が丘のコンセプトは、「モダンスタイルレジデンス」。
2005年の「愛・地球博」の開催以降開発が続いてきた長久手市は、リニア中央新幹線の開通も決定し、今後も継続的な発展が予想されています。そんな街に合う先進的なデザインを、という思いがこのコンセプトには込められています。
DH藤が丘は、決して大規模なマンションではありません。思い描いたのは、自分たちの時間を大切にしたいと願うご夫婦。暮らしやすさはもちろん、デザインにもこだわり、「このデザインが好きだから、この住まいを選んだ」――そんな選択をしていただけるマンションをつくりたいと考えました。

最も力を入れたのは、外観デザインです。これまでも私たちは、開発するマンションごとに外観にはこだわってきました。けれど、コンクリート打ちっぱなし、砂状吹付、木目調のアルミパネル、この三要素を組み合わせた外観は、今回が初めての試みです。マンションというよりは、近代建築の趣を感じさせる複合ビルのような風合いに仕上げました。それぞれの素材をどれぐらいの割合にするかで表情が変わるので、バランスには非常に気を遣いました。こうして、美しくモダンでありながら、長久手の自然に溶け込むナチュラルな外観が完成しました。

モダンスタイルレジデンスをコンセプトにした外観デザイン
モダンスタイルレジデンスをコンセプトにした外観デザイン
モダンスタイルレジデンスをコンセプトにした外観デザイン

収納は、暮らしやすさの基本

暮らしやすさを考える時に重要なのが、収納です。DH藤が丘では、住戸タイプや広さが様々であったため、各住戸の収納計画を丁寧に検討しました。

70㎡以下の住戸には、キッチン横にパントリーを設置。自動調理鍋や炭酸水メーカーなどのキッチン家電が収まるよう、パントリーには高さ約850mmの固定棚とコンセントを設けています。また、収納内にコンセントを設けることで、棚に置いたまま家電を使えるよう工夫をしています。

75㎡以上の住戸には、洗面室内に「Arau(洗う)ラック」を採用。これは洗濯物の「洗う・干す・畳む・片付ける」を一箇所でできる、フージャースが開発したラックです。時短と収納の両方を兼ね備えており、ご好評をいただいています。

また、小さな工夫ではありますが、全住戸に「ハウスワークベース」という収納も設けました。これは、掃除道具を一箇所にしまえるようにと開発された収納です。スティック型掃除機やロボット掃除機など、置き場所に困る充電型の掃除家電のためのスペースで、扉を閉めた状態でもロボット掃除機が出入りできるようになっているのが特徴です。

これらは全てこれまでのものづくりの創意工夫から生まれてきたものですが、それをしっかり採用しているのもDH藤が丘の特徴です。

洗濯物の<洗う・干す・畳む・片付ける>を一箇所でできる「Arau(洗う)ラック」
洗濯物の<洗う・干す・畳む・片付ける>を一箇所でできる「Arau(洗う)ラック」
外観写真
左:キッチン横パントリー 右:ハウスワークベース

設計図と現場を往復する

マンション開発では、設計段階では見えていなかったことが工事の現場で初めて判明するということも多いもの。今回も、例外ではなく……。
本来であれば目立たせたくない設備が正面から見えてしまってデザイン性を損なうなど、後から細かな課題が見つかりました。その度に図面を修正し、施工会社様と調整をしていったわけですが、これが、なかなか大変な作業でした。

設計図と現場を行ったり来たりする日々を、建築担当者は「現場にいる施工会社だからこそ気付けることも多く、問題があればその都度相談をしていただけたので、非常に助かりました」と振り返ります。建築担当者と施工会社が日ごろから培ってきた関係性の上に成り立つファインプレー。DH藤が丘に携わる人すべてが、物件の目指す品質やこだわりを共有し、同じ目線でものづくりに取り組んだことによって、高い目標をクリアすることができました。

“デザインが好き”から始まる住まい選びを

こうしてDH藤が丘は、2023年12月に無事に竣工しました。売れ行きもよく、一斉引き渡しのタイミングまでにはほとんどの住戸がご契約となりました。
特に嬉しかったのは、購入後アンケートの結果です。過半数の方が、今回の物件購入の決め手になったのは「デザイン」と回答。自由記述欄でも、外観のデザインに惹かれたというコメントが目立ちました。これは非常に珍しいことです。
今回は周辺に競合物件も多かったため、「DH藤が丘が欲しい」と思ってもらえるように、設計の意図を詰め込んだパンフレットを作成、販売のスタッフとも連携して、作り手の思いを伝えることを大切にしてきました。だからこそ、このアンケートの結果は本当に嬉しいものでした。

DH藤が丘を振り返ると、土地の条件が厳しく、非常に建築担当泣かせの物件でした。けれど、現場の職人さんの協力もあり、ようやく作り上げることができた物件です。図面での議論も大切ですが、“現場の声や関係性を大切にしたものづくりが、最後には物件の質を決める” という基本を改めて実感しました。これからも関係性の土台を大切にしながら、新しいことへの挑戦を続けていきたいと思います。

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